相続学校レジュメ⑤財産を評価する

財産の評価

金融資産の評価額

評価額の目安
現金 手元に保有する残高
預貯金 相続発生日の残高の合計額
定期預金は、[ 残高 + 既経過利子 - 源泉徴収税額 ]
上場株式 次の4つのなかから最も低い株価を選択でき、その株価に持ち株数をかけて算出する
①相続発生日(死亡日)の終値
②相続発生日を含む月の終値の平均額
③相続発生日の前月の終値の平均額
④相続発生の前々月の終値の平均額
(取引相場のない株式は個別に評価)
投資信託 相続発生日の解約請求等により支払いを受けることができる価額
公社債投信 相続発生日の市場価額+既経過利息

自宅の家屋と土地の評価額の出し方

平成30年度 税制改正
①持ち家に居住していない者に係る特定居住用宅地等の特例の対象者の範囲から、次の者が除外されます。
  1. 相続開始前3年以内に、その者の3親等内の親族又はその者と特別の関係にある法人が所有する国内にある家屋に居住したことがある者

  2. 相続開始時に居住していた家屋を相続前に所有していたことがある者

②小規模宅地特例の貸付事業用宅地等において、相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等は対象外とされた。30年4月1日以後の相続等から適用されるが、経過措置として、30年3月31日までに貸し付けた宅地等については、その3年以内に相続があっても適用対象となる。

自宅以外の家屋や土地の評価額の出し方

家屋

貸家
家屋の固定資産税評価額 × 70%

宅地

自用地
駐車場として更地にしている場合等
路線価 × 宅地面積 または固定資産税評価額 × 評価倍率
貸地
自用地の評価額 × ( 1 - 借地権割合 )
貸家建付地
自用地の評価額 × ( 1 - 借地権割合 × 借家割合 × 賃貸割合 )
農地 以下の4つに区分され、当てはまる区分の式で算出

①純農地
②中間農地

固定資産税評価額 × 倍率

③市街地周辺農地

④の評価額 × 80%

市街地農地

宅地比準方式または倍率方式で評価する
宅地比準方式・・・
(宅地とみなした場合の1㎡当たりの価格-1㎡当たりの 造成費 )× 農地地積(㎡)
山林
以下の3つに区分され、当てはまる区分の式で算出

① 純山林
② 中間山林

固定資産税評価額 × 倍率

③ 市街地山林

宅地比準方式(農地④参照)または倍率方式で評価する
株式は評価方法により3つに分けられる

上場株式

以下の①~④から、最も低い価格を選ぶ。

課税時期が属する月の 前々月の終値の月平均額

■【参考】現行制度における会社規模の判定

■【参考】現行制度における会社規模の判定

なお、これらの改正は平成29年1月1日以後の相続・贈与から適用されるため、その影響を早急に検証し、対策を講じる必要があります。

財産の評価(取引相場のない株式)

大会社


類似業種比準方式
(純資産価額方式も選択できる)

上場している同業種の会社の株価から評価する
中会社


併用方式
(純資産価額方式も選択できる)

類似業種比準方式と純資産価額方式を併用した計算により評価する
小会社


純資産価額方式
(併用方式も選択できる)

会社の資産や負債などから評価する

ただし、株主としての力が弱ければ「配当還元方式」となる

● 相続人が同族株主ではない
● ほかに中心的な同族株主などがいる + 相続人の(株式の取得後の)議決権が5%未満で役員ではない
● 相続人が属しているグループの議決権の合計が15%未満

配当還元方式

過去の配当金額を基準に、株価を逆算して評価する。

同族株主

議決権の合計が30%以上となる、株主のグループ(親族など同族関係者)。同族株主など、経営支配力を持つ株主の場合、会社の規模などにより、上記いずれかの評価方法をとることになる。

純資産 100%

※直前期2要素0、直前々期2要素0 = 批准要素1の会社:類似25%か100%純資産の低い方

平成30年度 税制改正

一般社団法人等を悪用した相続税の課税逃れに対処するため、特定の一般社団法人等(注)の理事(相続開始前5年以内のいずれかの時においてその一般社団法人等の役員であった者を含む)が死亡した場合、その一般社団法人等が次の金額をその死亡した理事から遺贈により取得したものとみなして、その一般社団法人等に相続税が課せられる改正が行われます。

特定の一般社団法人等が死亡した理事から遺贈により取得したものとみなされる金額

<計算式>

その一般社団法人等の純資産価額 ÷ 死亡時の同族役員の数(死亡した理事を含む) 

(注)
特定の一般社団法人等とは、次のいずれかを満たす一般社団法人等をいいます。
①相続開始直前において、同族役員数÷荘役員数の割合が50%超
②相続開始前5年以内において、上記①の割合が50%超である期間の合計が3年以上

平成30年4月1日(同日前に設立された一般社団法人等については、 平成33年4月1日)以後の理事の死亡から
相続税・贈与税 特例事業承継税制の創設

事業承継の際の相続税・贈与税の納税を猶予・免除する「事業承継税制」について、10年間の特例措置として、適用要件の緩和をはじめ大幅な拡充が行われます。具体的には、今後、5年以内に「特例承継計画」(仮称)を提出し、10年以内に贈与・相続による事業承継を対象として、(1)対象株式数上限等の撤廃、(2)雇用要件を実質的に撤廃、(3)対象者の拡大、(4)新たな減免制度など、これまで利用の妨げとなっていた要件が大幅に緩和され、使いやすい制度として新たに創設されます。

平成30年1月1日から平成39年12月31日までの贈与等が対象

①猶予対象株式数の上限の撤廃・猶予割合を100%に拡大

①猶予対象株式数の上限の撤廃・猶予割合を100%に拡大
①猶予対象株式数の上限の撤廃・猶予割合を100%に拡大
①猶予対象株式数の上限の撤廃・猶予割合を100%に拡大
①猶予対象株式数の上限の撤廃・猶予割合を100%に拡大

②雇用用件を実質的に撤廃

現行の事業承継税制では、5年平均で雇用の8割以上を維持できなければ、納税猶予が打ち切られるという要件が利用の妨げとなっていました。
特例では、右図のように仮に8割以上の雇用を維持できなくても、納税猶予が継続されるようになりました(維持できない理由の報告が必要)。

②雇用用件を実質的に撤廃
②雇用用件を実質的に撤廃
②雇用用件を実質的に撤廃

③対象者を大幅に拡大(複数人から1人、1人から3人等も対象)

現行の承継パターンは、「代表者から後継者のみ(1人から1人)」が対象ですが、特例では、承継パターンが拡大され、「複数人から1人」「1人から3人」への承継も対象になります。

③対象者を大幅に拡大(複数人から1人、1人から3人等も対象)
③対象者を大幅に拡大(複数人から1人、1人から3人等も対象)
③対象者を大幅に拡大(複数人から1人、1人から3人等も対象)
③対象者を大幅に拡大(複数人から1人、1人から3人等も対象)

※代表権を有している者と限る
※複数人で承継議決権割合の10%以上を有しかつ議決権保有割合上位3位までの同族関係者に限る

④経営環境の変化に応じた新たな減免制度の創設(承継後の負担の軽減)

特例承継期間経過後に、経営環境の変化を示す一定の要件を満たし、特例認定承継会社の株式を譲渡するとき、同社が合併により消滅するとき、あるいは同社が解散するときには、その時点の株式評価額で納税額を再計算し、納税猶予税額の一部を減免する制度が設けられます。
④経営環境の変化に応じた新たな減免制度の創設(承継後の負担の軽減)
④経営環境の変化に応じた新たな減免制度の創設(承継後の負担の軽減)

【特例】経営環境の変化による将来の不安を軽減

④経営環境の変化に応じた新たな減免制度の創設(承継後の負担の軽減)
④経営環境の変化に応じた新たな減免制度の創設(承継後の負担の軽減)

⑤相続時精算課税制度の併用適用を拡充

前述③の「対象者を大幅に拡大」を受け、推定相続人以外の者への贈与について相続時精算課税の適用が認められます。相続時精算課税の適用範囲を拡大することにより、納税猶予が取り消されたときに過大な税負担が生じないようになります。

⑤相続時精算課税制度の併用適用を拡充
⑤相続時精算課税制度の併用適用を拡充
⑤相続時精算課税制度の併用適用を拡充

財産の評価(土地)

路線価方式の評価額はこう計算する

評価額の計算式 

路線価 × 宅地面積(㎡)= 評価額

路線価図で路線価を調べる(例)

路線価図で路線価を調べる(例)

A~Gは借地権割合

土地の権利が借地権の場合は、金額の後についたアルファベットにより、以下の割合を掛ける。

A = 90%D = 60%F = 40%
B = 80%E = 50%G = 30%
C = 70%

路線価を記号が囲んでいる場合、その地域の「地区区分」を示す

路線価を記号が囲んでいる場合、その地域の「地区区分」を示す

倍率方式の評価額はこうして計算する

評価額の計算式 

固定資産税評価額 × 倍率評価額

倍率方式の評価額はこうして計算する

路線価や倍率表(上図)は、税務署または国税庁ホームページ「路線価図・評価倍率表」(http://www.rosenka.nta.go.jp/) でみることができる。

画地調整と計算例①

奥行価格補正

 その土地の奥行き(道路からの奥行距離)により、路線価を調整する。普通住宅地区の場合、奥行距離が短すぎるか長すぎる場合、評価が下がる。

(路線価×奥行価格補正率*)
路線価30万円、宅地面積250㎡(10m×25m) 普通住宅地区の場合

画地調整と計算例②

側方路線影響加算

 その土地が角地の場合は一定率を加算する(評価が上がる)。

側方路線影響加算
正面路線価 30万円、側方路線価 10万円 宅地面積200㎡(10m×20m)普通住宅地区の場合

借りている/貸している土地は評価額が下がる

借りている/貸している土地は評価額が下がる
「定期借地権」

 定期借地権等の目的となっている宅地は、原則として、その宅地の自用地としての価額から、定期借地権等の価額を控除した金額によって評価します。
 ただし、上記により評価した金額が次の算式で求めた金額を上回る場合には、次の算式で求めた金額を定期借地権等の目的となっている宅地の評価額とします。

< 算 式 >  
自用地としての価額-自用地としての価額×定期借地権等の残存期間に応じた割合(注)


(注)定期借地権等の残存期間に応じた割合
  イ 残存期間が 5年以下のもの        5%
  ロ 残存期間が 5年を超え10年以下のもの    10%
  ハ 残存期間が10年を超え15年以下のもの 15%
  ニ 残存期間が15年を超えるもの      20%

財産の評価

自宅の建物は、家屋と付帯設備を分けて評価する

自宅の建物は、家屋と付帯設備を分けて評価する

貸家の評価額はこう計算する

貸家の評価額はこう計算する
「固定資産税評価額」

財産の評価を下げる

資産の組換え

資産の組換え

マンション投資で相続税評価額を下げる

マンション投資で相続税評価額を下げる

居住用超高層建築物に係る課税の見直し

1. 固定資産税・都市計画税の改正

(1)改正の背景
 一般に、マンションの市場価格は高層階になればなるほど高額です。ところが、マンションの固定資産税額は「マンション全体の税額を各所有者の専有面積で按分した額」であり、低層階と高層階の価格差が反映されていません。つまり、「3階100平米、市場価格5千万円の部屋」と「40階100平米、市場価格1億円」の部屋では全く同じ税額となってしまうのです。そこで今回、低層階と高層階の固定資産税額に、市場価格の差を反映する改正が行われることになりました。
 なお近年、マンションの市場価格と相続税評価額との差を利用した「タワーマンション節税」が流行していますが、これに関する改正は盛り込まれませんでした。

(2)改正の概要
 居住用超高層建築物(高さが60mを超える建築物のうち、複数の階に住戸が所在しているもの)の固定資産税および都市計画税について、次の見直しが行われます。

①建物全体に係る固定資産税額を各区分所有者に按分する際に用いる「専有部分の床面積」を、次項②の「階層別専有床面積補正率」により補正する。
②階層別専有床面積補正率は、1階を100%とし、階が増すごとに「10を39で除した数(約0.26%)」を加えた数値とする。
③階層別専有床面積補正率は、居住用部分の税額を各区分所有者に按分する場合についてのみ適用する。
④天井の高さ、附帯設備の程度等について著しい差違がある場合には、その差違に応じた補正を行う。

■改正案の算式とイメージ

■改正案の算式とイメージ

 上記の改正は、平成30年度から新たに課税される居住用超高層建築物(平成29年4月1日前に売買契約が締結された住戸を含むものを除く)について適用されます。

■改正案の算式とイメージ

賃貸住宅を建てると土地の評価額が下がる

賃貸住宅を建てると土地の評価額が下がる

等価交換の例

等価交換の例

評価実例(不動産鑑定士の活用)

路線価評価が時価を上回る土地!

パターン 備考

新旧広大地に該当しないが
需要者が戸建開発業者になる土地

  • 広さの足りない土地
 実績 

広大地適用にリスクがある土地
(グレーゾーン)

  • 旗竿地で開発できる土地
 実績 

広大地を適用してもまだ
高い価格となってしまう土地

  • 無道路の面大地
  • 極端な崖地を含む面大地
 実績 
市街化調整区域の山林(面大地)

無道路地
極端な崖地
極端な不整形地

  • 財産評価基本通達とマーケットのギャップ
 実績 
市場流通性の低い建物がある
  • マーケットでは、土地値相当
  • マーケットでは、建物撤去費用を考慮

不動産鑑定士の活用

相続税の評価が下がる土地 (主なもの、数字は減額率)

墓地に隣接している

墓地に隣接している
10%

道路と高低差がある

道路と高低差がある
10%

電車の騒音がある

電車の騒音がある
10%

近隣に比べて広い

近隣に比べて広い
最大65%

埋蔵文化財がある

埋蔵文化財がある
発掘調査費用の80%を減額

形がよくない

形がよくない
最大40%

【実例①】 複数の貸家が私道でつながっているケース

770㎡の土地に貸家を4軒所有。
その脇に私道があり、4軒すべての貸家が私道でつながっている状況です。
この私道をどう評価するのかで、相続税や還付金の額に大きな違いが出てきます。

【実例①】 複数の貸家が私道でつながっているケース

【実例②】 所有地の内部に専用駐車場がある場合の土地評価

所有地に社宅をもっている方のケースです。
敷地内の社宅はもちろんのこと、専用駐車場を更地として評価するのか、一体となった私有地として評価するのかで価額は大きく異なってきます。

【【実例②】 所有地の内部に専用駐車場がある場合の土地評価

【実例③】 広大な土地を相続した場合の節税対策

3500㎡におよぶ広大な土地を相続した方のケースです。
広大地は有効利用することが難しく、また評価額が高くなってしまうケースが多く見られます。通常の土地評価ではなく、広大地として評価額を算出します。

【実例③】 広大な土地を相続した場合の節税対策



更地評価額 1億3,527万円

地積規模の大きな宅地の評価

計算式

広大地評価の計算式

(※1)間口狭小や奥行価格補正、不整形地補正の補正率

本ページは平成30年5月1日現在の税制に基づいて作成しております。また内容につきましては、情報の提供を目的として一般的な法律・税務上の取り扱いを記載しております。
このため、諸条件により本ページの内容とは異なる取り扱いがなされる場合がありますのでご留意ください。
対策の立案・実行は税理士・弁護士の方々と十分ご相談の上、ご自身の責任においてご判断くださいますようお願い申し上げます。

黒字決算を支援する3つのソリューション
K 継続MASシステム
F 戦略財務情報システムFX2
S 税理士法第33条の2による書面添付
病医院の新規開業・経営改善支援
三原総合経営グループ 三原康郎税理士事務所は
TKC全国会会員です

TKC全国会
TKC全国会は、租税正義の実現をめざし関与先企業の永続的繁栄に奉仕するわが国最大級の職業会計人集団です。
近畿税理士会所属

税理士番号:第96685号

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