生前贈与

生前贈与とは①

無償で財産を「(贈与者)あげる」、と「(受贈者)もらう」
というお互いの意思表示により成立する契約。贈与者の贈与の申し込みに対し、受贈者の受取の承諾があり初めて贈与契約が成立する。

贈与の成立

Cf.名義預金…申し込みと承諾がないため、被相続人の財産

贈与は不成立

生前贈与とは②

生前対策の効果

①贈与した分、相続財産が減る

②感謝を伝えられ、遺産分割争いを回避できる

生前対策の効果

暦年贈与

1月1日から12月31日の1年間に、1人に対し110万円に達するまで
何回贈与しても贈与税はかかりません。

贈与税計算

贈与税の課税価格 =(課税価格-110万円)×税率-控除額

贈与税率の早見表
基礎控除(110万円)後の課税価格 一般 20歳以上の者への
直系尊属からの贈与
税率 控除額 税率 控除額
110万超~200万円以下 10% 10%
300万円以下 15% 10万円 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円 15% 10万円
600万円以下 30% 65万円 20% 30万円
1,000万円以下 40% 125万円 30% 90万円
1,500万円以下 45% 175万円 40% 190万円
3,000万円以下 50% 250万円 45% 265万円
4,500万円以下 55% 400万円 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

※20歳以上の者(子や孫)が直系尊属(親や祖父・祖母など)から贈与を受けた財産に掛かる贈与税の税率と、
それ以外の人から贈与を受けた財産(一般贈与財産)に掛かる贈与税の2つに区分されます。

暦年贈与を応用する

贈与を贈る対象者は、相続人以外も可能
(例:長男の嫁、孫等)

※相続人への死亡前3年内の贈与は、相続税法上、相続財産への持ち戻しの対象となるため注意が必要
(高齢者については対象者を要検討)

暦年贈与を応用する

贈与の対象の当事者を増やし、暦年贈与できる金額を増やすことができます。

暦年贈与の対象者
金額×人数
年間の贈与額
子2名
110万円×2名
220万円
子2名とその配偶者
110万円×4名
440万円
子2名とその配偶者と孫4名
110万円×8名
880万円

暦年贈与と生命保険を組み合わせる①

生命保険の非課税金額の活用で、基礎控除内に収まらない場合には、生前贈与(暦年贈与)を活用して相続財産を減少させることも検討材料です。
毎年贈与を受ける子や孫の無駄遣いを防止し、有効活用してもらえるように、贈与と同時に受け取った子や孫は、同額の保険料の保険に入り、子や孫が年金、教育資金として受け取ったり、生命保険金で相続税が支払える形を作ることができます。

暦年贈与と生命保険を組み合わせる①
毎年の贈与額年数
移転した財産
(1人の受取人に対して)
贈与税の総額手取額
110万円10年1100万円
0円
1100万円
310万円
10年
3100万円
200万円
2900万円

毎年の贈与額が310万円であれば、贈与税率は6.45%(1年間の贈与税20万円÷310万円)となり、相続税の税率(最低10%)よりも低い贈与税の税率になる範囲内で長期にわたり生前贈与をすれば、相続税より税額を抑えることができます(要シミュレーション)。

暦年贈与と生命保険を組み合わせる②

暦年贈与と生命保険を組み合わせる②

対策:

  一時払終身保険(1000万円)と生前贈与


◎基礎控除
  3000万円+600万円×法定相続人の数2
名=4200万円

◎土地評価(小規模宅地特例を活用)
  6000万円×(1ー0.8)=1200万円 

◎生命保険の非課税枠
  500万円×法定相続人の数2名=1000万円

◎生前贈与
  110万円×4名(子2名とその配偶者) ×5年=2200万円


財産7200万円-生命保険の非課税枠1000万円-生前贈与2200万円
(財産内訳:土地1200万円、預貯金2800万円、生命保険1000万円、生前贈与2200万円)

=4000万円 基礎控除以内のため非課税

暦年贈与の活用の注意点

暦年贈与された現金を使って生命保険を契約する場合、税務署から贈与事実を否認されないように次のような点に留意することが必要です。

①毎年の贈与契約書の作成

②年間の贈与額が110万円を超えるときは、贈与税の申告を行う。

※贈与税の申告期限…財産の贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日
     納付期限…財産の贈与を受けた年の翌年の3月15日

③受贈者が贈与財産を管理する。

※現金の場合はが自ら持っている銀行口座で、受贈者本人が印鑑・通帳を管理する。
※保険料は受贈者受贈者の口座から引き落としを行う。

④生命保険料控除等は受贈者に適用する。被相続人(親)には適用しない。

暦年贈与の基礎控除(110万円)にありがちな4つの勘違い

贈与税は1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の金額の合計額に応じて課税されます。
この間、基礎控除額の110万円以下の贈与であれば贈与税がかかりません。
しかし、この「110万円」が一人歩きして、勘違いした解釈をしてしまう人が少なくありません。

勘違い①
勘違い②
勘違い③
勘違い④

暦年贈与の基礎控除(110万円)にありがちな4つの勘違い

勘違い①

基礎控除は贈与者ごとでなく、受贈者ごとに1年間に110万円になります。
この場合、父と母から110万円ずつ贈与されれば、合計220万円の贈与を受けたことになり、基礎控除110万円を引いた110万円に対して贈与税がかかります。

勘違い②

贈与を「毎年同じ日」で「同じ金額」にすると、「連年贈与」と解釈される可能性があります。
これは1年ごとに贈与を受けると考えるのはなく、契約をした年分に有期定期金に関する権利(10年間にわたり毎年100万円ずつの給付を受ける権利)の贈与を受けたものと解釈されてしまう恐れがあります。

4つの勘違い
勘違い③

これは「名義預金」とみなされ、贈与した人の贈与した人の財産を解釈されてしまう可能性が大きいです。特に、孫名義の預金の印鑑が贈与した人の印鑑と同一だったり、孫が遠方にいるのに、贈与した人の地元の金融機関に口座があったり、孫名義の預金残高が年齢の割に多かったりすると

名義預金とみなされてしまう可能性があります。

勘違い④

贈与とは、贈与者(財産をあげる人)が「あげます」と意思表示して、受贈者(財産をもらう人)が「いただきます」と受け取る行為を指します。贈与契約を取り交わし、贈与者が受贈者に財産を渡すことではじめて、贈与が成立します。
そのため、一方的に振り込んだだけでは、贈与とみなされない可能性があります。

4つの勘違い

夫婦間の居住用不動産を贈与時の配偶者控除

特例の要件

婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭(翌年3月15日までに居住用不動産を取得し、居住が必要)の贈与を行う場合の特例

特例の効果

基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで(配偶者控除)は贈与税が課税されない

注意点

①不動産取得税(相続では不要)がかかる、登録免許税(2%)が相続(0.4%)より高い
②相続であれば小規模宅地の特例により評価減ができるが、贈与時は適用なし

相続時精算課税制度

1月1日現在において60歳以上の父母、祖父母から20歳以上の子又は孫に対し、2500万円までは非課税で贈与できる制度
2500万円超の贈与については、金額を問わず一律20%の課税

□相続時に贈与時点の価格で相続財産に持ち戻して、相続税を計算する。
  ※基本的に相続税の節税効果がない
  ※民法の特別受益の持ち戻しは相続開始時点の評価で持ち戻す。評価が異なるため、要注意。
  ※不動産や株式など価格が変動するものはリスクがある。

□相続時精算課税制度を一度選択すると、この制度の対象とした親からの贈与については、暦年贈与の基礎控除110万円を以後使うことができない。

□相続時精算課税制度を使って贈与した土地の相続時に小規模宅地特例は使えない。

相続時精算課税制度を検討してもよい場合

□相続税がかからない家族で、土地など大型贈与を行いたい場合

□将来値上がることが確実な財産と収益物件の贈与

死因贈与

死因贈与とは

「自分が死んだら自宅を贈与する」といったような死亡によって効力が発生する契約です。

遺言と似ているが、贈与者と受贈者の合意が必要。

〇メリット
  • 贈与財産が不動産等の場合、仮登記をすることができる。
  • 執行者を定めておくことにより、執行者の権限で仮登記から本登記へ手続きを行うことができる。
✖デメリット
  • 遺贈に準ずるため、撤回が可能(民法第544条)
    ※負担付死因贈与については、受贈者がすでに負担を履行した場合は、撤回できないとの判例あり(最判昭和57.4.30)
  • 相続税扱いだが、相続とは異なり不動産取得税が課税される、登録免許税も高い。
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F 戦略財務情報システムFX2
S 税理士法第33条の2による書面添付
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三原総合経営グループ 三原康郎税理士事務所は
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TKC全国会
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近畿税理士会所属

税理士番号:第96685号

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