将来、相続が発生した場合に
☑誰が相続人になるのか?
(法定相続人の把握)
☑各相続人の相続分はどれ位あるのか?
(法定相続分の把握)
この2つが決まらないと始まらない。
⇒遺産分割対策は不要
⇒遺産分割対策が必要
相談者は80歳。妻は他界。5名の子どもがいます。
世田谷区内の自宅アパート兼店舗は相談者名義。この建物には相談者と長男夫婦が同居しており、店は小売店で長男夫婦が切り盛りしています(給与はそれぞれ月8万円)。
次男はサラリーマンで結婚し家を構え、長女、次女は他家に嫁ぎ、三女は米国人と結婚し、米国で暮らしています(帰化しており、米国籍)。
相談者も高齢になったが、店は同居している長男夫婦が切り盛りしているし、子どもたちもそれを理解している。
相続を考えると、税金対策は必要と思い、少しずつ子ども名義の口座に預金を移している。特に法律的に何かしなくても、長男を中心に子どもたちで話し合い、遺産の承継をしてくれると思うので、何もしなくてもよいと思っていますが、問題はありますか?
⇒民法にしたがって法定相続し、遺産分割をすることになる
果たしてこれでよいのか?
◎相談者の他界後、何が起きたか?
◎話し合いがつかないと、その後どうなるのか?
※審判では、法定相続分と異なる内容の審判をすることができない! |
☑ 複数の相続人が各自の法定相続分を主張するにもかかわらず、分割や売却が困難な財産が遺産の中心となってしまう
☑ 遺産分割審判では、法定相続分と異なる内容の審判はできない
☑ 相続争いは勝っても負けても不幸となる
☑ 避けるべきことは、相続による遺産分割を契機とする
家族関係の崩壊
☑ 相続で一度切れてしまった縁は、二度とつながらない
誰が相続人となり、相続分はいくつになるかについては、ルールがあります。
配偶者は常に相続人となります(内縁はダメ)。
配偶者以外の相続人が複数人いる場合には、その人数で均等に割ります。
配偶者との組合せで相続人となるのは下記のとおりです。
(民法第887条、889条、900条)
相続順位 | 親族の種類 | 相続分 | 配偶者の相続分 |
---|---|---|---|
第1順位 | 子 | 2分の1 | 2分の1 |
第2順位 | 直系尊属(親、親がいない場合は祖父母) | 3分の1 | 3分の2 |
第3順位 | 兄弟姉妹 | 4分の1 | 4分の3 |
代襲相続とは… 親より先に子が亡くなると孫が子の地位を承継する事。
本来の相続人となるべき者(子又は兄弟姉妹)が、
①相続開始以前に死亡
②相続欠格、廃除で相続権を喪失したこと
欠格…遺言書の偽造、変造、破棄、隠匿や詐欺、脅迫により遺言をさせたり、取り消させた場合等。その他被相続人等の殺人などがある。
廃除…遺留分権を有する推定相続人が、被相続人に対し、虐待、重大な侮辱、その他著しい非行等の行為により、審判等を経て廃除となる。
Cf.相続放棄は代襲相続原因ではない。
子の場合…再代襲○ 孫、ひ孫…何代も○
兄弟姉妹…再代襲× 兄弟姉妹が死亡の場合はその子まで。
⇒数次相続
★遺言がない方が90%以上なのが実情 ★仮に遺言を遺していても、遺言者本人作成の遺言は、内容が法的に無効なケースが散見 |
相続が開始した場合、相続人は次の3つのうちのいずれかを選択できます。
相続人がそれぞれ有する法定相続分に応じて、被相続人(亡くなった方)の土地の所有権等の権利や借金等の義務を全て受け継ぐ。
被相続人の債務がどの程度あるか不明であり、財産が残る可能性もある場合等に
相続で得た財産の限度で借金を支払い、後は払わなくてよい。
プラスの財産が残ったら相続できる。
※家庭裁判所に対して、相続を知った日から3か月以内に申述する
※相続人全員の意思の一致が必要
※相続順位は変わらない
最初から相続人とならず、相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がない。
※家庭裁判所に対して、相続を知った日から3か月以内に申述をする。
※相続人が単独でできる
※期間伸長の手続きをしておけば、3か月を超えても相続放棄は可能(再伸長も可)
民法第921条(法定単純承認)
次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
二 相続人が第915条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。
民法第939条(相続の放棄の効力)
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
相続を放棄するか否かの判断は慎重に行いましょう! 財産調査に時間が必要な際は欠かさず「期間伸長の申立て」を行いましょう! |
借金や保証債務等の債務は遺産分割できない |
①法定相続分で相続される
②法定相続分以外での遺産分割協議は相続人間では有効だが、
債権者の承諾がない限り、債権者に対抗(主張)することはできない
③債務の引受方法
◎免責的債務引受…他の相続人は債務から免れる
◎重畳的債務引受…連帯債務関係となる
被相続人の財産の維持又は増加に寄与した相続人がいる場合に、その者に対し寄与に応じた法定相続分を超える額の財産を取得させ、相続人間の公平を図るための制度
①寄与行為は主として無償、もしくはこれに準じるものであること
※相当の対価(給与等)をもらっていれば既に対価は織り込み済みのため×
②寄与行為は、「特別」な寄与行為でなければならない
※親の通常の介護は、夫婦や親族間の協力扶助義務、
扶養義務等の範囲内での行為は既に相続分の基礎に織り込み済みのため×
⇒しかし、実務では認められないことがほとんど
共同相続人中に
①被相続人から遺贈を受け
②婚姻、養子縁組のため
若しくは生計の資本として贈与を受けていた者がいる場合
※公平のため、贈与した財産を相続開始時の時価で遺産に持ち戻す制度
※期間制限はないので、何年経過しても持ち戻しされる
※被相続人の持ち戻し免除の意思表示があれば持ち戻す必要ない
★相続問題は「生前贈与」しても特別受益があるため、完全に解決できるわけではない ※暦年贈与を活用し、特定の推定相続人に対し毎年生前贈与をしてもそれは相続税対策となるだけで、 争続対策としての遺産分割対策の問題が解決するわけではない。 |
最低限、推定相続人(配偶者・子・親)が権利主張できる取り分
※兄弟姉妹には遺留分はなし
◎消滅時効
遺留分を侵害されていると知ったときから1年間
又は(知らなくても)相続開始のときから10年
推定相続人 | 遺留分 |
---|---|
配偶者 | 法定相続分×1/2 |
子 | 法定相続分×1/2 |
直系尊属 | 法定相続分×1/3 |
遺留分減殺請求行使後の権利関係 被相続人がした贈与が遺留分減殺の対象としての要件を満たす場合には、遺留分権利者の減殺請求により、贈与は遺留分を侵害する限度において失効し、受遺者が取得した権利はその限度で当然に右遺留分権利者に帰属する(最判平成11年6月24日)。 |
☑ 相続人が一人もいない
☑ 相続人の数が多い
☑ 内縁の妻(または夫)がいる
☑ 自分が死んだ後の妻(または夫)の生活が心配だ
☑ 相続人の中に行方不明者がいる
☑ 世話を焼いてくれた嫁(または婿)がいる
☑ 障害をもつ子どもに多くの財産を与えたい
☑ 家業を継ぐ子どもがいる
☑ 遺産のほとんどが不動産だ
☑ 自分でもどのくらい遺産があるかよくわからない
☑ 再婚など、家族構成に複雑な事情がある
☑ 隠し子がいる
☑ 遺産を社会や福祉のために役立てたい
☑ 相続に自分の意志を反映したい
☑ 特定の人だけに財産を譲りたい
☑ 推定相続人以外に相続させたい
☑ 財産を予め同居している子の名義にしておきたい